
読書しない読書会が、2026年3月7日(土)、和歌山県の那智勝浦町立図書館にて開催されました。
主催は和歌山県教育委員会紀南教育事務所。
参加者全員からポジティブな感想が集まり、アンケート回収率100%という結果とともに、読書推進の新しいかたちを示す開催となりました。
ファシリテーター未経験の方でも安心して運営できる「運営キット」を活用した今回の開催レポートを、主に教育関係者・図書館関係者の方々にお届けします。
開催概要

- 主催:和歌山県教育委員会(紀南教育事務所)
- 日時:令和8年3月7日(土)10:00〜12:00
- 会場:那智勝浦町立図書館
開催の趣旨と経緯

「読書しない読書会」は、本の内容ではなく、「その本を選んだ理由」を参加者間で共有することに特化した読書会です。
本を読んでいなくても参加でき、選書の過程を言語化することを通じて、自己理解や他者との対話が自然に生まれます。日頃読書習慣がない方にとっても、本に触れる新しい入り口となることを目指しています。

和歌山県では、2024年10月〜12月にかけて、紀南教育事務所がホストとなり県内3つの図書館で連続開催を実施してきました。
各会場で参加者からの反響を得るなかで、「この取り組みを県内に根づかせたい」という思いが育まれ、2026年2月の田辺市立図書館での開催(開催レポートはこちら)に続き、那智勝浦での実施が実現しました。今回はその継続開催の2回目にあたります。
「読書しない読書会 運営キット」を活用

今回の開催では、前回・田辺市立図書館での実践をもとにさらにブラッシュアップされた「読書しない読書会 運営キット」を使用しました。
このキットは、和歌山県教育庁 紀南教育事務所社会教育課のスタッフと何度もテストを重ねながら制作したもの。
「ファシリテーターの経験や知識がなくても、安心して場を進行できること」を最大の目標に設計されています。
キットの内容
● ゲームのしおり(5ステップ)
参加者が迷わず動けるよう、会の流れを5つのステップに整理したガイドです。
- 本との出会いを楽しもう — スマホや検索機を使わず、感性のままに書棚を歩いて1冊を選ぶ
- 選んだ理由を話そう — テーブルに本を並べ、選んだ理由をシェアする
- 本と仲良くなろう — 「ほんねカード」を引いて、本の新しい側面を発見する
- 本と自分をつなげてみよう — 日常との接点を探り、本を自分のものにしていく
- 本と一緒に、新しい毎日へ — 貸出カウンターへ。「選ぶ」ことから読書は始まっている
● ほんねカード(50枚)
本との対話を深めるための問いかけカード。色別に5つのカテゴリで構成されています。
| 色 | 役割 | 問いの例 |
|---|---|---|
| ブルー | 選んだ理由を言葉にする手助けをする問い | 「この本に期待していることは何ですか?」 |
| ピンク | 表紙・タイトル・手触りなど、直感的な印象を引き出す問い | 「この本の「見た目」で、一番気になったところはどこですか?」 |
| グリーン | 本を動物・食べ物・場所などに例える、連想ゲーム的な問い | 「この本を「動物」に例えるなら、どんな動物ですか?」 |
| パープル | 他の参加者との気づきの共有を促す問い | 「自分の本と「どこか似ている」と感じるた本はありますか?」 |
| イエロー | 本と日常・未来をつなげる問い | 「この本をきっかけに、「始めてみたいこと」はありますか?」 |
ファシリテーターを担当した方からは、こんな声をいただきました。
「運営キットの存在は大きく、安心して進めることができました。特にゲームのしおり②③④の流れは、話題をうまく切り替えながら次のステップへ進む際にとても使いやすいと感じました。参加者の皆さんもカードを『どれにしようかな』とニコニコしながら選び、それぞれお話をしてくれている様子がとても印象的でした。気づけばファシリテーターであることを忘れてしまうほど夢中になっている瞬間がありました。」
参加者の声

アンケートは回収率100%。全員がポジティブな感想を寄せてくれました。
なかでも印象的だったのが、現代の情報環境と読書のあり方を重ねたこの声です。
「最近は、SNSやいろいろなものでも、勝手に好みを分析され、おすすめされる中から流れるように映像や音楽を受け流してしまうことが多い世の中なので(自分も)このように能動的に選び、考え、話、他者とシェアするということは、本当に素敵なことだと思いました。」
また、図書館という場所への新しい視点もうまれました。

「図書館が好きで旅の目的にすることもあるけど、こんな図書館の楽しみ方、本の使い方もあることを知ったのがよかったです。また参加してみたいです。」
その他の参加者コメント(アンケートより抜粋):

- 「本を選ぶことにこんなに向き合う経験はなかったので、とてもおもしろかったです」
- 「日々、SNSや口コミで人気なものを受動的に選んでいることに気づきました」
- 「自分が選んだ本以外にも、同じグループの方々との出会いが楽しかった」
- 「本を読まずにこんなにも会話ができることもおもしろかった」
- 「自分の知らない気持ちにも気づくことができました」
図書館・行政からの評価

那智勝浦町立図書館の館長、那智勝浦町教育委員会の方からも、参加者の様子への感想とともに、この取り組みへの期待の声をいただきました。
「参加者の皆さんがとても楽しそうに取り組まれていて良かったです」

さらに、今回使用した運営キット(ゲームのしおり・ほんねカード)についても話題となり、「なるべく早く商品化してほしい」「商品化されたら、中学校の図書館で生徒たちに読書しない読書会をやってみたい」という声が届いています。

読書習慣の定着が課題とされる現場でも、このキットを手に取ることで実践への道が開けるという手応えを、現場の方々が感じてくださっています。
「読書しない読書会」を、図書館・学校でも

ここまで読んでくださった方の中には、「自分たちの地域でもやってみたい」と思ってくださっている方もいるかもしれません。もしそうなら、ぜひご連絡ください。
「読書しない読書会」は、運営キット(ゲームのしおり+ほんねカード50枚)を使えば、特別なスキルがなくても開催できます。ファシリテーター初体験の方が不安に感じがちな会の進行も、キットがあることで参加者が自然と話し始める場をつくることができるので安心です。
学校図書館・公共図書館・教育委員会主催のイベントなど、さまざまな場面での活用が可能な取り組みです。読書離れ、地域のつながりづくり、子どもたちの主体性——いろんな課題へのアプローチとして、「読書しない読書会」を使っていただければ嬉しいです。
▼前回レポート:田辺市立図書館 開催レポート


